【西日本新聞】なぜ？緊急事態宣言は「1度しか出せない」。政府が再指定に消極的な理由

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北九州市や東京都で新型コロナウイルスの感染者が増加傾向にある中、感染拡大の「第2波」が起きても、
政府は新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の再指定に踏み切らないとの見方が広がっている。
現状を第2波と見ず、地方との認識にずれも生じており、感染防止策より、動きだした経済活動を優先させたいとの思惑ものぞく。

「総理も『一度しか出せない』と言っていた。経済を考えると何度もやるものじゃない。ハレーション（悪影響）が大きすぎた」。
自民党幹部は安倍晋三首相の言葉を引用しながら、再指定に慎重にならざるを得ない理由を説明する。

政府は4月7日の宣言時点では、目安の一つを「累計感染者数が人口10万人当たり5人以上」としていた。
再指定では直近1週間の人口10万人当たりの累計感染者数▽感染者数が倍になる時間▽感染経路不明な人の割合－などを挙げる。
6月4日までの1週間で人口10万人当たりの累計感染者数は、福岡県で1・74人、東京都では0・92人。
政府は「今の段階で再指定を考えていない」としている。

だが北九州市では9・28人と増加傾向にある。北橋健治市長は5月29日の記者会見で、「第2波の真っただ中にある」と述べたが、
菅義偉官房長官は同日の記者会見で「第2波が来たとは考えていない」と主張。首相官邸幹部も「（北九州市長は）あおりすぎだ」
「全然心配してない」と繰り返した。

「第2波」を巡って政府が慎重な姿勢なのは、経済が2008年のリーマン・ショックを上回る大打撃を受けていることが影響している。
政府は4月16日に宣言の対象を全国に広げ爆発的な感染拡大を免れた。だが、コロナ関連の企業倒産が200社を超えるなど経済は急速に悪化。
このため政府与党内には「何百人と新規感染者が出ない限り、再指定はない」（自民幹部）との共通認識も広がる。

「地域的な感染の波が起きることは想定済み」と政府高官。政府は感染拡大を小規模に抑えながら経済活動と両立させる方針だ。