合宿免許がピンチ

新型コロナで夏の合宿免許予約激減　感染対策に追われる自動車教習所　山形

新型コロナウイルスの感染拡大は、免許合宿の利用者数が全国１位を誇る山形県内の自動車教習所に暗い影を落としている。
県内初の感染者が確認された現場になったためだ。首都圏からのアクセスの良さなどから、本来は夏休みを利用する学生が多く入校する稼ぎ時で、教習所は逆風を乗り越えようと、感染防止と経営の両立に追われている。【的野暁】

助手席に座る教官はマスク姿、窓ガラスを全開にした教習車が構内を走っていた。７月１５日、東京から来県した２０代男性の感染が確認された「マツキドライビングスクール白鷹校」は濃厚接触者全員の陰性が確認され、運営を再開した。

県内外１１カ所で、スクールを運営する大手「マツキ」（長井市台町）。国内で感染患者が初めて確認された直後の今年２月、管轄の置賜保健所と連携し、マスク着用や検温、消毒を実施した。若者と導線を分けるため、高齢者講習用のプレハブを新設したり、入所希望者には来県の１週間前から検温を依頼したり対策を続けてきた。

そんな中、３月に県内初の感染者が確認された場所は、米沢市の自動車学校。同業者に対する風当たりは強くなったが、県内最大の教習生を受け入れるマツキの高井俊幸総務部長は「対策を継続することで、感染拡大を防げることを再認識できた」と話す。

県指定自動車教習所協会などによると、県内の教習所は２８カ所。合宿利用者数（２０１９年）は約３万６６３５人で全国１位。大半が県外からという。次いで、静岡県が約１万９０００人、新潟県の約１万５０００人――と続く。

マツキは、１９６９年ごろ、初代社長が全国に先駆けて免許合宿を始め、県外から学生を呼び込んだ。学生が首都圏に集まり始めた７８年から合宿制度を導入。春休みや夏休みといった長期休暇はかき入れ時だ。年間約３万人の利用者のうち、首都圏の学生が約６割を占める。

同社は、古くから築いてきた大学とのつながりに加え、国内の旅行業登録の許認可を得ていることで、地元農家と連携したリンゴ狩りや、温泉など、観光が楽しめることも人気の理由だった。

ただ、コロナで状況は一変した。夏合宿の予約は例年の約２～３割にとどまり、このままでは、数十億の売り上げ減という。高井総務部長は「その日暮らしの状態だ。苦しいが、新たな感染者を出さない対策を引き続き続けて経営との両立を図っていく」と話す。

https://mainichi.jp/articles/20200808/k00/00m/040/025000c

コロナ対策で車の窓を全開にして教習を行う山形県長井市のマツキドライビングスクール長井校＝マツキ提供