【長野】「憩いの公園」削ってまで美術館作るの？ 中野市の計画案に市民から反対の声

■市民の声聞かず決定
中野市が、市立図書館の敷地にある「オアシス公園」に建設を予定している美術館の基本計画案に反対する市民の声が高まっている。市民の声を聞かずに憩いの場の公園を建設地に決めた決定過程を、「市民軽視」と疑問視。市は公園の一部を活用したミニ美術館で影響は少ない―とし、中心市街地の新たな文化芸術の交流スペースにしたいと理解を求める。しかし、見直しを求める声が収まる気配は見えない。（松崎林太郎）

■反対集会に２５０人
１４日午後、市中央公民館で開かれた計画の見直しを求める市民集会。会場は来場者約２５０人で埋まった。参加した女性は「オアシス公園は本を読んだり、子どもが遊んだりする憩いの場で中野の宝」とし「なぜ、あそこに美術館をつくるのか理解できない」と訴えた。

■市長選の公約、水面下で検討
市は８月６日の市議会全員協議会で、公園に美術館を建設する基本計画案を初めて公表した。美術館を巡っては、湯本隆英市長が昨年１１月の市長選で公約に「ミニ美術館の建設」を掲げ、市は本年度予算で調査設計に４２００万円を計上。建設地について、市議会に対しては「庁内で検討中」との説明にとどまった。

水面下では、１月に関係部署の職員によるプロジェクトチームを立ち上げて検討を始めていた。３月に事業費の一部を国交付金で賄うため、参考として公園を建設予定地とする図を添付し、内閣府に申請書を提出。公園を含む複数の市有地について、コンサル会社を交えて適地を絞り、７月に「鉄道やバスによるアクセスの良さ、周辺施設と連携が可能、新たなふれあい空間が実現できる」といった観点で、評価が高かった公園を建設地に決めた。

■見直し求める声やまず
この間、市内の図書館利用者や美術関係者といった市民の声を聞く機会はなかった。このため、計画案が公表されると「駐車場が少なく図書館の利便性が下がる」「公園の広さでは美術品の収蔵スペースが確保できない」「公園一帯は埋蔵文化財の調査が必要な区域に指定されており、適地ではない」などと、見直しを求める市民の声が相次ぐことになった。

開会中の市議会９月定例会では、議長を除く１９人の市議のうち、７人が９～１１日の一般質問で、美術館の建設計画の見直しを求めた。市民の意見を聞く機会を設けなかった理由を問われた湯本市長は、市の計画策定には「策定過程から市民と協同で進めるもの、市が策定案を作ってから公表するものがあり、今回は後者で進めた」と述べた。

■再検討求める請願、採択
湯本市長は、施設の広さは公園全体の約１５％に当たる約４５０平方メートルを予定し、「緑空間を残し、図書館と連携した魅力ある美術館にする」と説明。駐車場は近隣の民有地を借用するなどし、収蔵スペースはほかの市有施設に確保する―などと理解を求め、建設地は「重大な支障が生じない限り変更しない」と強調した。

しかし、１９日の市議会民生環境委員会では、建設場所の再検討を求める請願が賛成多数で採択された。１４日の市民集会では「市民不在の計画を強行するならば抗議を続ける」との決議文が採択された。

市民の合意形成をどう図るのか。市の姿勢が問われている。

［中野市の美術館建設の基本計画案］市が２０２７年３月の完成を目指し、市立図書館敷地の公園に平屋建ての施設約４５０平方メートルを建設。美術や音楽、スポーツの分野などで活躍する市出身の著名人に関する資料を展示し、カフェやラウンジも設け、市の新たな魅力を発信し、文化芸術の交流の場にする。整備費は、２０２５年度予算に計上した調査設計費４２００万円を含む計４億９２００万円とし、国交付金や起債（借金）で大半を賄うとしている。

2025/09/23 06:30
信濃毎日新聞
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2025092200948
市民の憩いの場になっているオアシス公園