「加熱式タバコ」からも高毒性の放射性物質「ポロニウム」が

2006年11月1日、旧ソ連から英国ロンドンへ亡命していた元KGB職員、アレクサンドル・リトビネンコという男性が死亡した。

彼の死因は、放射性物質ポロニウムを2回に分けて摂取させられ、ロシアの情報機関によって毒殺されたと考えられている（※1）。

ポロニウム210は、天然に存在する放射性物質で1898年にキュリー夫妻によって発見された。

半減期は約138日、崩壊時にアルファ線を放出し、体内へ入ると内部被ばくを引き起こす。

ポロニウム210の前駆物質はラドン222（Rn-222）、鉛210（Pb-210）、ビスマス210（Bi-210）で、これらによるアルファ線とガンマ線による放射線毒性が健康へ重篤な影響をおよぼす。

特に問題になるのが、タバコに含まれるポロニウム210だ。

大気中のラドン222、そしてタバコ栽培の畑や肥料などからタバコ葉に鉛210やビスマス210などが蓄積し、それがポロニウム210になってタバコ葉に凝集される。

含まれるポロニウム210の量はタバコ葉の銘柄や産地などによって異なるが（※2）、1キログラムあたり2.8ベクレルから37ベクレル、1日20本を1年吸う喫煙者の年間実効線量は、

約130マイクロシーベルトから約700マイクロシーベルトとされ、ポロニウム210を含む揮発した煙を吸い込むことによって肺がんなどを発症する原因になる（※3）。

年間1日20本吸う喫煙者の放射線被ばくリスクは、胸部X線を300枚撮影するリスクと同じと見積もられ、喫煙者10万人あたり4人の肺がん患者を発生させる危険性がある。

にもかかわらず、タバコ会社は1960年代からタバコ製品にアルファ線を放出する放射性物質が含まれていることを知りつつ、それを公開してこなかった（※4）。