職場の美人人妻（３４歳）　食事に誘ってもええの？　セックスもあわよくばしたい

https://mainichi.jp/articles/20201222/org/00m/040/008000d

三浦 天紗子・評『セックス依存症』斉藤章佳・著

アップデートされない価値観や社会構造も要因
◆『セックス依存症』斉藤章佳・著（幻冬舎新書／税別840円）

　ギャンブル依存症やアルコール依存症など依存症の中でも、あまり共感や同情を得られなさそうなのが〈セックス依存症〉。字面だけでは性欲過剰な変態くらいの印象で、性は個人の自由という感覚が一般的だろうからだ。しかし、軽く見てはいけない。セックス依存症には、多分に犯罪とつながりやすいところがある。本書で紹介されている例では、オンラインゲームやＳＮＳを介してつながった未成年に性的な要求をして事件化するなどがそのひとつ。より強い快楽を求めて、危険ドラッグや覚醒剤など薬物使用につながってしまった人もいた。発覚すれば、逮捕などのリスクもあり、社会生活も危うくなる。

　また、読んでいて気になったのは、依存症患者の「問題行動を手助けしてしまう」行動〈イネーブリング〉について。たとえば、アルコール依存やギャンブル依存に陥った人の家族などが、本人に代わって頭を下げたり借金を肩代わりしたりといったことはめずらしくない。そうやって経済的、身体的、社会的な痛みのクッションになってしまうことで、本人はその損失に鈍感になる。先日も、著名人の不倫で妻が謝罪コメントを出すケースがあった。依存症の支え手を〈イネーブラー〉と呼ぶが、あれも一種の〈イネーブリング〉だろう。

　他の依存症と同じように、セックス依存症もまた、心身や環境などが複雑に絡まり合って引き起こされる病だが、第５章で、日本の社会構造との密接さを指摘している点は特に重要だと思う。男尊女卑社会や未熟な性教育、性的同意という概念不徹底など、日本社会のアップデートされない価値観や社会構造そのものが、この依存症を作り出している大きな要因であることが見えてくる

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三浦天紗子（みうら・あさこ）
　1964年、東京都生まれ。ライター、ブックカウンセラー。ブックレビュー、ウーマンズヘルスなどの記事を執筆。主な著書に『そろそろ産まなきゃ 出産タイムリミット直前調査』『震災離婚』など