【歳川隆雄】仰天米国 トランプ演説 抗議デモを打倒すべき敵とみなす 逆に民主党市長は犯罪者が市民を大量射殺した後に警察削減

トランプ大統領の仰天スピーチ…ついに米国民をも敵に回した！
Black Lives Matterへの対抗 2020.07.11
歳川 隆雄　現代ビジネス　
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73981

のけ反るほど驚いた
7月4日夕、ホワイトハウス南庭園で開かれた独立記念日を祝う式典でドナルド・トランプ大統領は演説を行った。

同演説をテレビ中継で聴いていた外務省の対米政策のキーマンから勧められて、ホワイトハウスのホームページから得た英文テキスト
「Remarks by President Trump at the 2020 Salute to America」を読んでみてのけ反るほど驚いた。

仰天したフレーズの原文を引用する。
<We are now in the process of defeating the radical left, the Marxists, the anarchists,
　the agitators, the looters, and people who, in many instances, have absolutely no clue what they are doing.>（注：赤字は筆者）

意訳すると、次のようになる。
<我々は今、急進左派、マルクス主義者、無政府主義者、扇動者、略奪者などを倒す戦いに勝利する真只中にいる。>

白人警官による黒人暴行死事件を契機に全米に拡大した
人種差別抗議デモ参加者（その一部は暴徒化したが）や社会格差拡大反対の活動家が
「マルクス主義者やアナーキスト」であるかのような発言である。

トランプ大統領はこれまで米中貿易不均衡や先端技術搾取問題で中国を、
メキシコ国境に壁建設で中南米からの不法移民を、
米軍駐留経費負担増要求問題でドイツなど一部欧州を、
核実験や長距離弾道ミサイル発射で北朝鮮を、
テロ支援勢力・国家としてイランやイスラム国（ISIL）を「敵」として、
それらとの戦いに勝利することを目指してきた。

●保守層へのアピール

「トランプによる米国の分断」は指摘されて久しいが、
4カ月後に米大統領選を控えてトランプ大統領は、ジョー・バイデン元副大統領を標的にして民主党左派から
「Black Lives Matter（黒人の命は大切だ）」をスローガンに掲げる人種差別に抗議する市民までを十把一絡げにした
「敵」として保守層にアピールする選挙戦略である。

因みに、米国では1919年にマルクス・レーニン主義を掲げて結成された米国共産党（CPUSA）が
現在の党勢はともかく、きちんと存在している。

筆者がのけ反ったトランプ発言であるが、米国内の実情は徐々に変化しつつあるようだ。
先の人種差別抗議デモが掲げたもう一つのスローガンに「Defund the Police（警察解体）」がある。
過剰取り締まりで暴行死させた警官批判が警察予算削減から警察解体までエスカレートしたことで、
ここに来て米国市民の日常生活を脅かす凶悪・銃犯罪が全米で急増しているのだ。

先週末、シカゴ市で一般市民79人が銃撃され15人が死亡した。
被害者の過半は未成年である。
6月の銃犯罪件数が424件で、前年同月比75％増となった。
ニューヨーク市では6月の3週間だけで125人が銃撃されて12人が死亡した。
にもかかわらず、民主党のデブラシオ市長は警察予算を10億ドル（約1080億円）削減すると発表している。

●深刻な治安不安

他方、銃犯罪が悪化するジョージア州アトランタ市で7日、8歳の少女が犠牲となる悲劇が発生、
一時「Black Lives Matter」と「Defund the Police」を支持したボトムズ市長は
記者会見で警察の警備行動を擁護した。
暴行死事件があったミネソタ州ミネアポリス市でも同様な動きが出てきている。
「警察解体」主張のリバウンドが全米の主要都市で起こりつつあるのだ。

まさかトランプ大統領は、民主党が支持した人種差別・警察解体運動が
間接的に凶悪犯罪の増加を招き市民生活を脅かす事態となることを先取りして、
演説の中で「法と秩序」を謳い上げたとは思えないが、
結果的に今日の深刻な治安不安が同大統領へのフォローの風となっていることは否めない。

この先、事態の鎮静化を求める市民の凶悪犯罪増への批判の矛先が民主党の市長、
市議会、州知事、州議会に向かうことは十分あり得る。
それにしても、である。
筆者はトランプ大統領のマルクス主義者や無政府主義者との戦い、
というワーディングにはとても従いていけない。

まさかもなにも、こんなんアホでも分かるだろ