すぐヤレる女の特徴

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埼玉）3500本分析集大成　できたワイン「特徴なし」

世界のワイン約3500本の分析結果を注ぎ込んだ新しいワインを、さいたま市のベンチャー会社が開発した。南フランスのブドウを使った特注品。だが、「何も特徴がない」のが特徴で、名前も「基準のワイン」。こんな味気ない代物を、なぜわざわざ作ったのか――。

　話の舞台は、約20年前、愛知県内にできたレストランにさかのぼる。

　当時20代半ばだった同県安城市のソムリエ、神谷豊明さん（44）はある悩みを抱えていた。同じ甘口ワインでも、客によって「甘過ぎる」と言ったり「甘さが足りない」と言ったり。味の「物差し」がまったく違う現実を見たのだ。

　ワインとは別の食べ物で嗜好（しこう）を探る努力もした。例えば、「コーヒーには何個砂糖を入れます？」「ラーメンは塩としょうゆ、どちらが好き？」といった具合に。だが、限界があった。

　そして、ある発想に行き着いた。「さまざまなワインの味を数値化できれば、客観的な『物差し』になる。ワインの知識がない人でも自分の好みを見つけられるようになるのでは」

　約1千万円の味覚センサーを購入したのは30歳を過ぎたころ。6年かけて赤や白など計約3500本分、甘みや濃厚さの度合いを測定し、独自の味覚マップに結果を落とし込んだ。

　しかし、マップだけでは素人が自分好みを見つけるのは難しい。そこで思いついたのが「基準のワイン」だ。すべての測定データのちょうど真ん中になるワインがあれば、それをまず飲んでもらうことで、甘さや渋さの加減など、お気に入りの1本が見つけやすくなると考えた。

　この構想に、神谷さんの取引先だったさいたま市の坂下慧志郎さん（29）が興味をもった。坂下さんは昨年2月、当時在籍していた食品メーカーを退社し、4カ月後には新会社「SAKELAVO」を設立。さまざまなワインの平均値を取った「基準のワイン」が昨年10月に完成した。

　すでに納品した百貨店やスーパーには、味覚マップを表示するタブレット端末も設置している。独自に開発したアプリが搭載されており、訪れた客が画面上で甘さや渋さの度合いを選ぶと、店内にある該当商品が表示される。

　ワイン愛好家の裾野が広がりそうな販売方法だが、裏を返せば「ソムリエいらず」の仕組み。当の神谷さんのソムリエとしての立場は大丈夫なのか。

　「単に客の好みを探すだけなら居場所はなくなりますね」と神谷さんは笑う。「けれど、ワインは同じ銘柄でも熟成度合いやグラスの選び方一つで味わいが変わる。そこまで踏まえた飲み方や、相手が予想もしない新たな好みを提案するのはソムリエならでは」。どうしても人間でなければならない領域もある。

　同社では、日本酒600種類の味覚データも蓄積しているといい、6月ごろ、ワインと同様に「基準の日本酒」も作る計画だ。