障碍者になろうと思う。　オススメの障害教えろ

https://digital.asahi.com/articles/ASN4Q53V1N4PUBQU00J.html

テレワークの可能性「証明できた」寝たきり社長の自負

ウェブ制作会社を経営する佐藤仙務（ひさむ）さん（28）は、生まれつきの難病のため左手の親指しか動かせず、自らを「寝たきり社長」と呼ぶ。
そのため19歳で起業したときから、テレワークは日常業務だ。新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークが広がる現状を、佐藤さんはどう見ているのか。「視線入力装置」で執筆した原稿を寄稿してもらった。
私は、生まれつき難病を抱えている重度の障碍者だ。生後十カ月で、筋肉が動かせなくなる「脊髄（せきずい）性筋萎縮症」と診断された。体の自由がほとんど利かず、動かせるのは目や口と、左手の親指を1センチほどだけだ。
呼吸器系が弱いため、もし新型コロナウイルスに罹患（りかん）した場合、命を落とす可能性が非常に大きい。私と同様、世界中の高齢者や基礎疾患を抱えている人たちは、毎日不安な日々を過ごしているだろう。
だが、こんな社会情勢でも一つだけ希望がある。それは「テレワーク」という働き方があることだ。私は「仙拓（せんたく）」というウェブ制作会社を営んでいるが、コロナウイルスなんてものは関係なく、設立当初からテレワークを働き方の基本としている。
事務所こそあるものの、私以外のスタッフが出社してくることまずない。そもそも社長である私でさえ、対面での打ち合わせがなければ、事務所にいることはあまりない。
この原稿も当然、自分で執筆している。私の場合、一般の人が使うような通常のマウスを扱うことはできないので、視線入力装置というものを活用している。眼球の動きでマウスカーソルを操作し、わずかに動く左手の親指で決定スイッチを押すことで、パソコンの操作全般が可能となる。
この視線入力に加え、音声入力を組み合わせると、原稿用紙5枚程度のボリュームであれば一時間ほどで文字入力ができる。
たとえ寝たきりでも、パソコンやスマホで自宅や出先から業務を行えるので全く問題がない。そして付け加えれば、スタッフには障碍者もいれば、健常者もいるが、「あなたは障害があるのでテレワークで働いてください」と言ったことは一度もない。原則、私は五体満足な健常者にもテレワークをしてもらっている。
もちろん、事務所に出社することがNGではないので、時折、スタッフと事務所で食事をしたり、クライアントが対面での打ち合わせを希望したりという場合においては、出社してもらうケースもある。
私がテレワークに強いこだわりを持っているのには、一般的なテレワーク推奨論である「無駄とリスクの削減」以外にも、ある大きな理由がある。それが「可能性」だ。
納得いかない説明、覚えた危機感
この可能性を信じることになったのは、今から十年前にさかのぼる。それは私がまだ会社を起業する前、養護学校の高校3年生だったときの話だ。私は卒業を前に就職活動をしていたが、なかなか思うようにいかなかった。他のクラスメートは次々と就職先が決まっていくのに、私だけが取り残されていた。
理由は簡単で、それは私がクラスでもダントツに障害が重たかったからだ。他のクラスメートは車椅子で授業を受けているのに対し、私はベッドで横たわりながら学校生活を過ごしていた。そして、授業中のノートテイクや教科書のページめくりも自分で行うことができないので、養護学校の先生にサポートしてもらっていた。
そんな日常生活全てにおいて介助が必要な私だったので、進路相談の先生も私の就職先を探すのに大変苦労していた。ただ、私はどうしても「仕事をしてお金を稼ぐ」という当たり前を手に入れたかった。当時の私は今のように起業して、社長になるという発想はなかったので、とにかく手当たり次第、働ける場所を探した。
だが、現実は無情で、進路担当の先生が就職希望先に電話をしても、私の障害の状態を伝えただけで、私に会ってもくれず断られていた。一般企業ならともかく
障碍者就労に理解のありそうな特例子会社でさえも、「自力で通勤は出来ますか」と聞かれ、難しいと伝えると、「それでは残念ですが…」という流れで話は終わってしまっていた。
もちろん、いくつかの候補先の担当者が会ってくれることもあったが、私が「在宅で働くことも可能でしょうか」と聞くや否や、すぐに話を打ち切られることも。特に印象に残っているのが、私が「ここでは通勤さえ出来れば、仕事が出来ようが出来まいが関係ないということでしょうか」と尋ねたときのことだ。
その担当者は「その通りです」と答え、続けてこう話した。