【トランプ大統領】米の死者数予測を修正　10万～24万人→6万人　5月1日にも行動自粛要請解除へ

トランプ米大統領は10日、ホワイトハウスで記者会見し、新型コロナウイルス感染による国内死者数が、政府予測の10万～24万人を「大幅に下回る」との認識を示した。そのうえで「できる限り早く（米国を）再開させたい」と述べ、全国民を対象に実施中の行動自粛要請を延長せず、最短で5月1日から経済・社会活動の正常化を目指す可能性を示唆した。前のめりなトランプ氏の方針に「感染再拡大のリスクがある」と危惧する声が上がっている。

　トランプ氏は新たな死者数予測について「6万人」と言及。「決して喜べる数字ではない」とする一方、「積極的な対応が多くの命を救っている明白な証拠だ」と強調した。ホワイトハウスは3月31日、外出や集会の制限など対策を取った場合でも死者数が10万～24万人に及ぶとしていた。行動自粛に応じる国民が約半数との前提で試算していたが、「実際は90％以上が協力した」（トランプ氏）と下方修正の理由を説明する。

　トランプ氏は感染者数の伸びが、感染者数最多の東部ニューヨーク州を含め「全米で鈍化してきている」と指摘し、早期収束に期待感を示した。今月14日に医療専門家と経済界関係者で構成する「米国再開委員会」を設置し、同30日が期限となっている政府の行動自粛要請の終了・延期について検討を依頼する。

　トランプ氏が早期の正常化を急ぐ背景には、全米に急速に広がった経済後退への強い危機感がある。失業保険申請は過去3週間で1600万件を超えた。11月の米大統領選で勝敗のカギを握る中西部でも失業者が急増していることにトランプ氏は焦燥感を募らせる。会見では「自宅にいること（失職）で失われる命もある」と強調した。

　ただ、米国内の感染拡大は鈍化の兆しはあるもののピークには達していない。ニューヨーク・タイムズ紙は10日、今月末で行動制限を解除した場合、感染拡大の「第2波」が発生するとの分析を米厚生省などがまとめたと報じた。

　各地で発令されている外出禁止令などの行動制限は知事ら首長の権限だが、政府が自粛要請を解除すれば制限緩和は確実だ。国立衛生研究所で新型ウイルス対策を率いるファウチ博士は会見で「いま成功しているからといって感染防止の行動を決して緩めてはならない」と警告した。感染や抗体の有無を判別する検査体制が確立される前に経済活動の再開を決定すれば、労働者の職場復帰を巡って混乱が生じるとの懸念もある。

　トランプ氏は行動制限の解除と経済再開のタイミングについて「私の人生最大の決断になる。多くの意見に耳を傾ける」と述べたが、具体的な判断基準について問われると自身の頭を指さして「ここにある」と語った。【ワシントン高本耕太】

毎日新聞2020年4月11日 13時04分(最終更新 4月11日 13時05分)
https://mainichi.jp/articles/20200411/k00/00m/030/122000c