元コンビニ店員、超有名な未解決事件から真実を見いだしてしまう…

ある種の職業病とでも言えるが、筆者は常々、ドラマや小説などの中に買い物のシーンが登場すると、ついつい気になって買い物の仕方や金額、品物などを細かく見てしまう。なぜなら作品において、本筋とは関係のない、何気ない描写としてこうしたシーンが描かれる場合、往々にして登場人物の性格や生活などが現れるような配慮がなされているからだ。

このことは、我々が行う日々の「リアル」な買い物においても当てはまり、買い物の中身を見ると、おのずとその人物の人となり、さらにはどのような生活を送っているかなどがバレてしまうことを意味しているといえるだろ。

　さて、筆者は若い頃、都心部のあるコンビニエンスストアで、長らくアルバイトをしていたのだが、こうしたバイトをしていると、客が来た瞬間に何が目的なのかがわかり、買い物の中身についても、ほぼ言い当てられるようになるという、使えるのか使えないのかまったくわからないような珍妙な芸当が身につくこととなる。

それは、客のタイプ別に、だいたいどのようなものを買うかがパターン化されているからだ。従って、逆にレシートを見ても、その持ち主がどのような人物なのかも、おおよそは見当がつくというわけなのだが、ごくごく稀に、そうしたパターンが見えず、極めて不自然な組み合わせの、言わば店員目線では「違和感しか抱かない組み合わせ」で買い物をしているケースが存在する。

実はそうしたケースの何割かは、「別の目的」がある客で、たとえば、適当な買い物をすることで犯行を隠そうとしている万引き犯であったり、競合店の偵察部隊であったりもするのだが、その実、こうした「違和感を抱く組み合わせ」の買い物客でさえも、店員目線でいえば、それなりにはパターン化されていて、それこそ、店員生活が長くなってくると、来店した瞬間に、これから万引きや強盗が起きることさえ察知できるようになる。

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　おそらく、こうした買い物をする客の多くは、ほとんど自炊はせずに、いつも出来合いの弁当や惣菜、カップラーメンにお湯を入れる程度のことしかしないタイプか、買い物自体に不慣れなタイプで、筆者の経験上、人数的な比率としては意外にもそこまで多くはない。また、焼きそばやお好み焼きは出来合いのものであることから、彼らが自炊できないような外出先で食べる、というシチュエーションも考えられなくもないが（※実際、ラブホテルに行くカップルなどは、近隣で似たような買い物をしているケースがある）、仮にそうだとすると、普通はあるはずのものが見当たらない。

　そう、飲み物だ。無論、飲み物だけを先に別の場所で購入している可能性もゼロではないが、大抵、この手の買い物を「普通のカップル客」がする場合は、飲み物が含まれていることが多いのだ。ゆえに筆者は、このレシートを見ていると、そもそも買い物自体かデタラメで、ハナから自分で食べることを想定していなかったかのように思われてならない。ただ、焼きそばとお好み焼きについては、1つ興味深い点がある。彼らがこのスーパーを訪れた際、その目と鼻の先で、午後9時過ぎまで盆踊りが行われていたのだ。普通、男女のペア客ならば、盆踊り会場に立ち寄り、そちらのほうの出店で購入する確率が高く、そこで買えるような代物を、わざわざそばのスーパーで買うという点に、筆者は強い違和感を抱く。

　さて、お気づきの方も少なくないと思うが、実はこのレシートの中身は、1995（平成7年）7月30日の夜に、当時、東京都八王子市大和田町にあったスーパーマーケットで女子高生ら3人の従業員が執拗な暴行の末に射殺された『八王子スーパー強盗殺人事件』（大和田町スーパー事務所内けん銃使用強盗殺人事件）、別名『ナンペイ事件』または『八王子スーパーナンペイ事件』とも呼ばれる強盗殺人事件において、捜査当局が長年に渡って情報提供を呼びかけ続けているにもかかわらず、何ら手がかりがないままとなっている「男女のカップル客」が購入したものなのだ。無論、筆者の店員バイト経験ごときでこの客の消息を掴めるかといえば、それはあまりに難しいが、少なくとも今回こうした記事を出し、それを多くの人々が目にすることで、情報提供の一助となればと切に願うばかりである。