ワイ「ええっ!?チノちゃんが記憶喪失になった!?」

1 : 2020/11/22(日) 23:47:13.72 ID:PMutZcoJ0
ココア「うん…先日の交通事故で意識不明のままだったけど、
昨日意識が戻ったんだ。でも、どうやら私たちのことも、
自分のことも覚えていないらしくて・・・ってワイさん!?」

ワイはココアの言葉を最後まで聞くことなく、走り出していた。

何人もの通行人とぶつかりそうになりながら、無我夢中で走って、チノちゃんが入院している病院に駆け付けた。

ワイ「チ、チノちゃん・・・・!!!!」

チノ「・・・!?」

チノちゃんが目を見開いてワイを見る。
彼女は入院着の姿で、病院ベッドに背もたれている。

ワイ「チ、チノちゃん・・・えと」

チノ「……どちらさま、ですか?」

ワイ「・・・・!!」

チノちゃんは、本当にワイのことを忘れていた。

2 : 2020/11/22(日) 23:47:30.35 ID:PMutZcoJ0
ワイ「えっと、ワイはチノちゃんが働いているラビットハウスでアルバイトしている、ワイっていう者や」

チノ「そうですか…ラビットハウスのことはココさんから聞いています……。すみません何も思い出せなくて」

ワイ「いやいや!ええんやで!(ココさんやなくてココアやけどなぁ)」

チノちゃんは申し訳なさそうに顔を俯けた。

ワイ「ほんまに自分のこともみんなのことも忘れとるんやな・・・」

チノ「はい・・・。お医者さん曰く、私自身に関する記憶が抜け落ちていて、それ以外の一般常識は元のままだそうです」

ワイ「そっかぁ。でも、命に別状はなくてワイはよかったわ!」

思わずワイは目頭を熱くさせた。

チノ「……っ……」

チノちゃんは知らない男性が顔を赤くしていることに驚きの顔を浮かべた。

チノ(そんなに、私のことを想ってくださっていたんですね……。彼のためにも、一刻も早く記憶を取戻さないと……)

3 : 2020/11/22(日) 23:47:34.04 ID:dL8b66iH0
うるさいですね…
4 : 2020/11/22(日) 23:47:38.30 ID:1TIoywin0
その話はつまらん
よそでやれ
5 : 2020/11/22(日) 23:47:58.85 ID:4zw6JylY0
視力喪失するやつは?
6 : 2020/11/22(日) 23:47:59.73 ID:iPIs21mQ0
ワイ君…
7 : 2020/11/22(日) 23:48:09.00 ID:PMutZcoJ0
それから数日間、ワイは毎日のようにチノちゃんのもとに通った。
そして、ワイのことやチノちゃんのこと、思い出話などを語った。
一方的に語るワイにチノちゃんは少しだけ困った顔をしつつも、決して拒むことはなかった。
しかし、それでもチノちゃんの記憶が戻ることはなかった。

ワイ「チノちゃ~ん、今日も来たよー」
チノ「ワイさん……」

ワイ「今日はリンゴもってきたで。ワイが剥くから…いててっ」

慣れない手つきのせいで、ナイフが指をかすってしまった。
それを見たチノちゃんが神妙な顔付きで言った。

チノ「どうして、ワイさんは私のためにそこまでしてくれるのですか?」

ワイ「え?」

ワイは言葉に詰まった。

チノ「あなたは毎日私のもとに来てくれます。ココアさんやお父さんよりも。どうして、そんなに?」

ワイ「それは…」

ワイ(チ、チノちゃんのことが好きやからなんて、言えへんやん…)

ワイ「はは、ワイはただチノちゃんが早めに治ってくれればと思っとるだけやで」

チノ「……そうですか」

チノちゃんはワイが剥いたリンゴを齧った。小さな口なので端の部分しか収まらない。

ワイ(危なかった、バレるとこやったで。でも……いつかは、ワイの本当の気持ちをチノちゃんに伝えたい……)

8 : 2020/11/22(日) 23:48:26.66 ID:PMutZcoJ0
チノちゃんが記憶喪失になってから一週間経とうとしていた。
お医者さんから「外に出ても大丈夫」と診断をもらったので、日光浴もかねて
ワイとチノちゃんは散歩に出かけた。
とりあえず、二人並んで歩いてコンビニにでもいくことにしてみた。
チノちゃんの足どりは久しぶりのせいかギコちなさはあるものの、健康な人のそれであった。

ワイ「やっぱり外にはたまには出ないとね、チノちゃん」

チノ「……」

ワイ「チノちゃん?」

チノちゃんはなんだか元気無さそうにしている。

ワイ「どうしたの?具合悪いんか?」

チノ「いえ、そうではありません……ただ」

チノ「こんなに色々してくれているのに、何も記憶が思い出せないのが申し訳なくて……」

ワイ「なんだ、そんなことか。気にしなくていいよ。ワイは気長にチノちゃんが回復するのを待つやで」

チノ「で、でも……」

その時だった。

9 : 2020/11/22(日) 23:48:47.97 ID:PMutZcoJ0
轟音とともに巨大な物体がワイたちに迫る。
トラックがワイたちの方に突っ込んできたのだ。
瞬間、ワイは頭が真っ白になった。

チノちゃん「ワイさん!」

チノちゃんの声に、ワイははっとした。

ワイ(チノちゃん……。チノちゃんを守らな!)

ワイは体を投げるようにチノちゃんを庇った。
その勢いで、ワイたちは地面に体を叩きつける。

ワイ(頼む、トラック、轢かんといてくれ!)

熱気と地面を削るブレーキ音が体全体を襲った。

ワイ(ハァハァ……)

気付くと、トラックは幸いワイたちに当たらずギリギリのところで回避した。

ワイ「チノちゃん……よかった!」

チノ「うぅ……」

ワイ「チ、チノちゃん……!?」

チノちゃんは倒れた時に頭を打ったようで、苦しそうな顔を浮かべていた。

ワイ「チノちゃん!?アカン、病院にはよ戻らな!」

ワイ自身、体全体を打っている。あちこちに痛みが走る。でも、ワイの体なんかよりチノちゃんの方が大事だ。

10 : 2020/11/22(日) 23:49:10.13 ID:PMutZcoJ0
ワイ「チノちゃん、しっかりしぃや!おんぶして今すぐ病院にいくから……」

チノ「どうして……?」

ワイ「?」

チノ「どうしてワイさんは、私のために、こんなことまで……?」

ワイ「それは……!」

ワイは、この一刻を争うこの時に、何を言おうとしているんだ、と静止しようと思った。だがもはや我慢できなかった。

ワイ「チノちゃんの、君のことが好きだからや……!」

チノ「……!」

チノちゃんは驚きの顔をする、が意識が朦朧とし始めている。

そしてほんの少しだけ、微笑んで言った。

チノ「嬉しい、です……」

そのままチノちゃんは意識を失ってしまった。

ワイ「チノちゃん……!」

ワイはすぐさまチノちゃんをおんぶし、全身の痛みも忘れて無我夢中で病院に駆け込んだ。

ワイ(頼む、無事でおってくれ!)

11 : 2020/11/22(日) 23:49:35.27 ID:iPIs21mQ0
いや普通救急車呼ぶよね
12 : 2020/11/22(日) 23:49:51.84 ID:z1HWW2C90
これ初めて見た
13 : 2020/11/22(日) 23:50:08.59 ID:PMutZcoJ0
チノ「……?」
ワイ「チノちゃん!?」

あれから数時間、ワイたちはココアやチノちゃんのお父さんをよんで、お医者さんと共にチノちゃんの意識が回復するのを待った。
そしてついにチノちゃんの意識が戻った。

ココア「よかったチノちゃん!」
ワイ「ほんまや!一時はどうなるか思うたで!」

チノ「あの……」

ワイ「チノちゃんごめんな、ワイのせいでまたこんなことになってもうて」

ココア「ワイさんのせいじゃないよ。トラックの運転手さんがスマホ運転してたのが悪いんだから」

ワイ「せやけど……」

ワイ「せ、せやチノちゃん。あの時言ったことは、その……」

ココア「ワイさん、チノちゃんに何か言ったの?」

ワイ「いや、それは、えと……」

チノ「あの!」
ワイ「?」

様子のおかしいチノちゃんに一同の注目が集まる。

チノ「あの、みなさんどちら様ですか……?私は、どうしてここに、いや私は誰ですか?」

ワイ「……!」
チノちゃんはまた記憶喪失に陥っていた。

14 : 2020/11/22(日) 23:50:28.22 ID:dL8b66iH0
子宮なさそう
15 : 2020/11/22(日) 23:50:36.34 ID:8M5ln54d0
つまんねえぞガ●ジ
16 : 2020/11/22(日) 23:50:43.63 ID:PMutZcoJ0
それから一週間が経った。

医者「頭を打ったとはいえ、前回とは違い大きなダメージがなかったのですが」

お医者さんがカルテを何度も見直す。

医者「もしかしてチノさんは単なる記憶喪失ではない可能性があります」

ココア「それって……?」

医者「前向性健忘の一種……。一定期間経つと、記憶がリセットする状態に陥っている可能性があります」

医者「チノさんの場合、一週間で記憶がリセットされる状態であるといえます」

ワイ「……!」

事実、チノちゃんはあの後数日は無事過ごせたが、一週間経つと三回目の記憶喪失が発生した。

ワイ「そんな……。チノちゃんは治るんですか!?」

医者「今は何とも……。身体機能自体は特に問題は無いのですが、様子見をするしかありません」

お医者さんは申し訳なさそうに口をつぐんだ。

18 : 2020/11/22(日) 23:51:19.18 ID:iuufYcM20
>>16
毎週えげつないセックスできるやん!
17 : 2020/11/22(日) 23:50:59.02 ID:PMutZcoJ0
ワイ「……っ……」

ワイたちはチノちゃんの病室に行った。

チノ「あっ、みなさん」

チノちゃんは天使のような微笑みを浮かべていた。

ワイ「チノちゃん…」

チノ「お医者さんから私の症状は聞いています。一週間しか私は記憶を持てないそうですね。本当にご迷惑おかけします」

ワイ「……」

ワイはこの儚き少女に何もしてあげられない。
無力さを痛感し、打ちひしがれた。

19 : 2020/11/22(日) 23:51:25.61 ID:PMutZcoJ0
ワイ「チノちゃん、今日も来たで」

チノ「…?」

ワイ「あぁそうか…今日で一週間経つんか…」

ワイはベッド近くの椅子に座り、何度目かの自己紹介を行った。

チノ「すみません何も思い出せなくて」

ワイ「ええんやで」

チノちゃんはぽうっと窓の外を眺めている。

あれから数週間経って、何度も記憶がリセットされた。その間チノちゃんはほとんど外出することがなかった。

今のチノちゃんには世界がどのように映っているのだろう。
全てが新鮮で、そして全てが恐怖にうつっているに違いない。
だから何度リセットしてもずっと病室に引きこもっている。

ワイ(……)

20 : 2020/11/22(日) 23:51:46.35 ID:PMutZcoJ0
ワイ「チノちゃん、いきなりなんやが今から遊園地行かんか?」

チノ「え?」

ワイ「きっと楽しいで、いこや」

チノ「で、でも」

ワイ「お医者さんの許可ならもらっとるから大丈夫やで!」

その後も渋るチノちゃんを説得し、ワイたちは近くの遊園地へと向かった。

チノ「ここが、遊園地……」

ワイ「そっかチノちゃんにとって未体験の場所なんか」

チノ「いえ、遊園地の知識自体はあるんです。ただ来た記憶はないだけで」

ワイ「そっかぁ(ゆーてワイもチノちゃんが記憶喪失になる前に来たことあるかまでは知らんけどなぁ)」

ワイ「じゃあ、目いっぱい楽しもうやチノちゃん!まずはどれに乗る!?」

チノ「で、ではあのジェットコースターに乗りましょう」

ワイ「せ、せやな!(ヒェ…)」

それからワイたちは一日中、遊園地を楽しんだ。

21 : 2020/11/22(日) 23:52:05.87 ID:PMutZcoJ0
ワイ「チノちゃ〜ん、お待たせー」

ワイは遊園地の売店で用を済ませ、チノちゃんに声を掛けた。

チノ「あの…」

チノちゃんは何だか勿体ぶったようすだ。

ワイ「? どないしたん?」

チノ「どうして、今日は遊園地なんかに私を連れてきてくれたんですか?」

チノ「こんなことを言ってはなんですが、私はまた何日か経てば記憶を失ってしまうのに…」

ワイ「それは…」

ワイは一度ツバをのみこんだ。

ワイ「ゆ、遊園地みたいな楽しい場所に来たらチノちゃんの記憶も戻るかな思ってな。たはは」

チノ「そう、ですか」

精一杯の笑顔をつくっていった。

22 : 2020/11/22(日) 23:52:27.36 ID:PMutZcoJ0
ワイ(確かにそれは間違いではないけど、ほんまはちゃう。
チノちゃんは一週間で記憶が消える。もしこれが治らんだら、
チノちゃんは、“今のチノちゃん”は一週間で消えてしまうんや…。
言ってしまえば一週間の命しかないんや)

ワイ(だから、この今のチノちゃんにもたった一週間しかない命でも、思い出をつくってあげたいんや…)

チノ「では、帰りましょうか」

チノちゃんは遊園地の出口に足を向けた。

ワイ「せやな。でもちょっとこの後もういっこ寄りたいとこよってええか?」

チノ「? いいですけど」

28 : 2020/11/22(日) 23:53:27.81 ID:oVwuSNmNM
>>22
流れ変わったな
23 : 2020/11/22(日) 23:52:33.58 ID:wTEJH8/ma
メチルアルコール飲ませれば治るんちゃう?
24 : 2020/11/22(日) 23:52:45.35 ID:PMutZcoJ0
ワイたちが来たのは、街の外れの高台だった。

チノ「わぁ…綺麗な場所ですね。夜景が一望できます」

ワイ「せやろ、ワイのお気にの場所やねん」

ワイは、空を仰いだ。

ワイ「まだ、勇気が湧いてこやんなぁ…」

チノ「え?」

ワイ「……」

ワイはゆっくりとチノちゃんに顔を向けた。

ワイ「チノちゃん……」

チノ「……はい」

ワイ「これ、よかったらもらってくれんか?」

ワイは、小さな紙袋を渡した。先ほど遊園地で購入したものだ。

チノ「え、えと、ありがとう、ございます」

25 : 2020/11/22(日) 23:52:57.90 ID:qacnIZAdd
これは悪質な二次創作
実際はワイさんとチノの立場が逆
26 : 2020/11/22(日) 23:53:03.09 ID:PMutZcoJ0
ワイ「今、紙袋から出してみてくれんか?中に箱が入っとるで、それも開けてくれや」

チノちゃんは神妙な顔つきのワイに只ならないものを感じ、黙ったまま指示をこなす。

そして、箱を丁寧に破ると、中からペンダントが現れた。

チノ「うわぁ、かわいいです」

チノ「?」

チノちゃんは気付く。どうやらそれは、ただのペンダントではなくロケットペンダントのようだ。

チノちゃんは上目遣いでワイを見た。ワイは黙って頷いた。

チノちゃんが、チャームを開ける。中には今日の遊園地で撮影した、満面の笑顔のワイとチノちゃんのツーショットの写真だ。

チノ「あっ……」

チノちゃんの頬がほんの少し薄桃色に変わる。

ワイ「チノちゃん」

そして、ワイは言った。

ワイ「ワイ、チノちゃんのことが、好きや」

27 : 2020/11/22(日) 23:53:23.01 ID:PMutZcoJ0
チノ「!」

チノちゃんは目を見開かせた。

チノ「あの、冗談ですよね?」

ワイ「冗談やない。本気や。死ぬほどドキドキしとるわ、今……。それが証拠や」

チノ「でも、ワイさん……」

ワイ「わかっとる。一週間経てば、チノちゃんの記憶が消える」

チノ「だったら、私に好きっていっても意味がありません!」

ワイはすっとチノちゃんに近づき、そしてぎゅっと、抱きしめた。

29 : 2020/11/22(日) 23:53:32.28 ID:dL8b66iH0
既成事実作り放題やん
30 : 2020/11/22(日) 23:53:39.71 ID:PMutZcoJ0
チノ「……っ……」

ワイ「わかっとる、わかっとる……!でもワイはチノちゃんのことが好きなんや!」

ワイ「ワイが、チノちゃんを幸せにする……! 例え記憶を失っても、何度でも……!」

チノ「ワイ、さん……」

ワイはチノちゃんから身を離した。

ワイ「ほんで、そのペンダントはその証拠や。チノちゃんが記憶を失っても、そのペンダントがある限り、ワイたちの思い出は、この思いは残るんやで」

チノちゃんはペンダントをぎゅっと握った。

チノ「ワイさん、う、うぅ……ありがとうございます」

たまらず、チノちゃんはボロボロと泣き始めてしまった。

ワイはチノちゃんの頭に手をおいて、優しく撫でた。

31 : 2020/11/22(日) 23:53:59.37 ID:PMutZcoJ0
その後数日間、ワイたちは毎日のように出かけた。
動物園、水族館、映画。ショッピングにも出かけてチノちゃんに可愛い服を買ってあげたりもした。

そして6日目。

ワイ「……」

ワイ(いつも通りなら、明日でリセットするんやな……)

ワイはドアを開いて、病室に入った。

チノ「あっ、ワイさん……」

チノちゃんは顔を赤らめた。

ワイ「チノちゃん。きょ、今日もお出かけしようや!」

ワイはとにかく明るい声で、チノちゃんを誘った。

チノ「はい、でもワイさん。今日は私が行きたいところに行ってもいいですか?」

ワイ「? ええで」

チノ「ありがとうございます」

32 : 2020/11/22(日) 23:54:13.41 ID:PMutZcoJ0
そしてその夜、ワイたちはいつぞやの高台にまたやってきた。

ワイ「チノちゃんここ気にいったんか?」

チノ「はい、また来てみたくなりまして……」

チノちゃんの、空色の髪が風とともに揺れる。
そのまま、飛んでいってしまいそうな小さな体をワイに向けた。

チノ「ワイ、さん」

ワイ「…何や?」

チノ「あの、えと…」

チノちゃんはお腹の前で指をもじもじさせる。

33 : 2020/11/22(日) 23:54:30.28 ID:oVwuSNmNM
早くしろカス
34 : 2020/11/22(日) 23:54:32.94 ID:PMutZcoJ0
チノ「返事、してないと思いまして」

ワイ「返事?」

チノ「ワイさんが、私のこと、好きっていう……」

ワイ「!」

ワイはあの時の気持ちの昂ぶりを思い出して赤面した。

チノ「私、私は」

チノ「私、ワイさんが……」

チノちゃんはその小さな足を、一歩に前に踏み出した。

チノ「私も、ワイさんのことが」

チノ「好き、です」

彼女は恥ずかしさで顔が真っ赤でいた。

いや違う。彼女は泣いていた。

ワイ「チノちゃん……」

チノ「好きです……! 好きです!」

ポロポロと涙が、溢れだす。

35 : 2020/11/22(日) 23:54:47.09 ID:PMutZcoJ0
チノ「だから、だから、忘れないでください。私のことを……」

ワイ「! 忘れるわけ無いやんか! ワイがチノちゃんのことを」

チノ「でも、私は忘れてしまうんです……。ワイさんの、ことを」

チノ「ワイさんのことがこんなに好きなのに、忘れてしまうんです!」

ワイ「……っ、チノちゃん!!!」

ワイは、ガバッとチノちゃんの体を抱きしめた。

チノ「ワイ、さん……」

ワイ「チノちゃん!」

チノ「すき、すきです……すき、すきぃ!!」

ワイ「ワイもやでチノちゃん! ワイもチノちゃんのことが好きやで!」

チノ「忘れたくないです、ワイさんのこと忘れたくないですぅ!」

二人は永延と泣き続けた。

36 : 2020/11/22(日) 23:54:52.03 ID:dL8b66iH0
セックス中に規則喪失になるんか
37 : 2020/11/22(日) 23:55:04.45 ID:PMutZcoJ0
次の日

ワイ「……」

ワイ「一睡もできんかった……」

いつも通りならば、チノちゃんは記憶が消えている。

ワイが今から病室に向かって、チノちゃんと顔を合わせても彼女は昨日の彼女ではない。

ワイとともに月明りのもとで涙を流したあのチノちゃんは、もういない。

ワイ「いや、そんなことはない……」

記憶がそのままである可能性はある。

ワイ「ワイが、マイナス思考になってどないすんねん」

ワイは一度頬を打って、気を取りなおした。

スマホに連絡が入る。どうやらココアは先にチノちゃんに会いにいくようだ。

ワイ「今日も、チノちゃんに、会いに行こう」

それでも、ワイは嫌な予感が頭から離れなかった。

もう、”チノちゃん”に会えない。

どうしても、その予感が頭から離れないのだ。

ワイは靴を結び、玄関を開けた。

38 : 2020/11/22(日) 23:55:27.54 ID:PMutZcoJ0
チノ「……」

チノちゃんは、ぽうっと、外を眺める。

チノ「……」

彼女の水色の髪が日光で白く輝き、ベッドの色とあわさって白い妖精のようだ。

そこに、荒々しい声が病室の遠くから聞こえてくる。

なんだろう、とチノちゃんは思っていたが、その声の主がどんどん自分の方に近づいてきて、そしてついに自分の病室を開けた。

それは、ココアだった。

ココア「はぁ、はぁ」

チノ「?どうしましたか、ココさん」

39 : 2020/11/22(日) 23:55:42.79 ID:PMutZcoJ0
ココア「ち、チノちゃん大変だよ!さっき電話で……」

ココア「ワイさんが、子猫を助けようとして、車にはねられたって……」

ココア「いま、ここの病院に救急車向かっているんだけど、そ、即死で間違いないって……」

ココアは言い終わると、力尽いたようにその場にぺたりと座り込んだ。

ココア「チノちゃ……」

チノ「あの、ココさん」

そしてチノちゃんは言った。

チノ「ワイさんって、どなたですか?」

40 : 2020/11/22(日) 23:55:55.38 ID:bbqozWGo0
これは何話?
41 : 2020/11/22(日) 23:56:03.06 ID:PMutZcoJ0
数日後、ワイの葬儀が行われた。チノちゃんも参列したが、特に悲しむ様子はなかった。

それから一か月―――

ココア「チノちゃん、退院おめでとうー!」

チノ「ありがとうございます」

チノちゃんは記憶を失うことがなくなり、外で暮らすことが可能となった。
ただし以前の記憶が戻ったというわけではない。記憶喪失のままである。

ココア「退院祝いに、チノちゃん今日はめいっぱい遊ぼうね!」

チノ「はい、ココアさん……!」

42 : 2020/11/22(日) 23:56:06.74 ID:iPIs21mQ0
ハッピーエンドやん
43 : 2020/11/22(日) 23:56:18.09 ID:PMutZcoJ0
そして二人は遊園地に向かった。

ココア「チノちゃん、遊園地に来たことあるの覚えてる?」

チノ「いえ、記憶にないです。ごめんなさい」

ココア「……いや、いいよ。じゃあ遊ぼっか♪」

ジェットコースター、メリーゴーランド、お化け屋敷……他にも沢山のアトラクションを一日中楽しんだ。

ココア「ふぃー、今日は楽しかったねー」

チノ「はいっ、とっても楽しかったです」

ココア「……チノちゃん、何か思い出せたことあった?」

チノ「いえ、ごめんなさい、特に何も……」

ココア「そっか、いいんだよ。じゃあ帰ろっか」

44 : 2020/11/22(日) 23:56:30.52 ID:7X1+Ck1la
盲目なんか?
45 : 2020/11/22(日) 23:56:37.88 ID:PMutZcoJ0
チノ「……」

ココア「? チノちゃん」

チノ「あの、ココアさん。もう帰るんですか?」

ココア「そうだけど?」

チノ「……もう一か所いかなきゃいけないところがあるような……」

ココア「え?催しちゃった?」

チノ「いえ、そうだ……。確か……。ココアさん、ちょっと寄り道してもいいですか?」

ココア「いいけど……」

チノちゃんは自分の体に残っている何かの記憶を頼りに、ある場所に向かった。

そこはワイと一緒に行った、高台だった。

ココア「へー、チノちゃんこんなところ知っていたんだ」

チノ「……いえ、知らないはずです」

46 : 2020/11/22(日) 23:56:43.10 ID:oVwuSNmNM
早く子宮破壊しろよ
47 : 2020/11/22(日) 23:56:49.23 ID:dL8b66iH0
ペンダント捨てそう
48 : 2020/11/22(日) 23:56:53.38 ID:PMutZcoJ0
ココア「え?」

チノ「でも、なんだか、ここを忘れちゃいけない気がするんです。知らない、はずなのに」

見ると、チノちゃんの目に涙が溢れ始めていた。

チノ「……そうだ」

チノ「これ、ペンダント……」

チノちゃんはポケットからペンダントを取り出した。いつの間にか自分の手元にあったもので、よくわからなかったが、なぜかこれを片時も手放しはならない、と思ってずっとポケットに入れてあったものだ。

49 : 2020/11/22(日) 23:57:07.47 ID:PMutZcoJ0
チノ(これ、チャーム式だ)

チノちゃんはチャームを開ける。中には写真があって、自分と、見知らぬ男性の姿が映っている。

いやしかし。

チノ(私、この人のこと知っています……)

チノ(知らないはずなのに、知っています……)

ポロポロと涙が頬を伝ってペンダントを濡らす。それを拭うこともできず
チノちゃんはただただ、写真を見つめる。

チノ(そして、この人のこと、忘れてはいけない、気がします……)

チノちゃんは、グッとペンダントを握った。

チノ「そうだ、この人はワイさん……です」

ココア「チノちゃん?」

チノ「思い出しました、ワイさんです。私の、大切な人……

50 : 2020/11/22(日) 23:57:13.05 ID:jq+kqx/A0
あかん泣きそう
51 : 2020/11/22(日) 23:57:22.64 ID:PMutZcoJ0
ココア「チノちゃん、もしかして記憶が!?」

チノ「……思い出しました、全部……。記憶を失う前の記憶も、今までのことも……」

チノ「そして、ワイさんと過ごした日々を……!」

ココア「チノちゃん!!!」

ココアは思わずチノちゃんに抱き着いた。チノちゃんは溢れる涙をようやくぐっと拭った。

チノ「どうして、私、忘れていたんだろう……こんな大切な人のことを……」

夕日が、二人を照らした。

52 : 2020/11/22(日) 23:57:39.21 ID:PMutZcoJ0
その後、改めて病院で検査をし、チノちゃんは完治したと医者から診断をもらった。

チノちゃんは記憶を失う前と同じ生活をおくれるようになった。

チノ(でも、もうワイさんはいない……)

ココアやリゼ、シャロに千夜たちと毎日楽しく過ごしても、どこか心の中にポッカリ空いた
穴が塞がらない。

ワイさんとの最後の一週間の記憶。

あの時間はチノちゃんの中で絶対に忘れられない記憶となった。

たった一週間しか持たない自分のために、あの人はずっと尽くしてくれた。

病室に引きこもって生きる希望も失っていた自分に、楽しさを思い出させてくれた

53 : 2020/11/22(日) 23:57:51.49 ID:PMutZcoJ0
ココア「チノちゃーん、そろそろお出かけの時間だよー」

チノ「あっ、ココアさん、ちょっと待っててください」

チノちゃんは引き出しからペンダントを取り出し、首に掛けた。
チャームを開け、ワイとの写真を見つめた。

チノ(ワイさんは、私に生きる希望を教えてくれた……。絶対に私はあなたのことを忘れない……。必ず)

チノちゃんはにっと笑って、チャームを閉じて、日の光の溢れるドアを力いっぱい開けた。

END

54 : 2020/11/22(日) 23:58:08.88 ID:wmr93Rb10
いつ射精管理してくれるんや
55 : 2020/11/22(日) 23:58:11.52 ID:jq+kqx/A0
おおん😭

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