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配属の理由、作文書かされ東芝子会社「追い出し部屋」

東芝の主要子会社に社員から「追い出し部屋」と呼ばれる部署がつくられた問題が、法廷で争われることになった。背景にあるのは、景気が不透明さを増すなか、前倒しで人員削減を進める企業の動きの広がりだ。
希望退職を募った上場企業は2019年に判明しただけで36社。かつて厳しい批判を浴びた追い出し部屋のような例は表面化していないが、募集人数は6年ぶりに1万人を超えた。
東芝系社員、退職拒み単純作業「追い出し部屋」と反発
問題の部署は、東芝が100%出資する東芝エネルギーシステムズ（ESS、川崎市）が昨年4月に新設した「業務センター」。複数の関係者によると、希望退職を拒んだ社員ら20人超が配属され、自社の工場や他社の倉庫で肉体労働などをさせられている。数人がすでに退職したとみられるという。
断ってもまた面談
9日に配属の無効などを求めて提訴した小里正義さん（51）は、川崎市役所内で記者会見し、「スキルやキャリアがまったく生かせない仕事に回された。会社に抗議したが、誠意ある回答が返ってこない。
提訴しないとらちがあかなくなった」と説明した。勤め先を訴えた裁判で、原告が実名と顔を出して会見するのは異例。「家族に累が及ぶ不安も大きかったが、一連の処遇に対する会社への憤りや怒りがわずかに上回った」とも語った。
小里さんは東芝に入社後、IT技術者としておもに原発関連のシステム開発を担当。分社したESSに移っても似た仕事をまかされてきた。
ところが、ESSが45歳以上を対象に昨年3月末での希望退職を募ると、環境が一変する。上司との面談で「あなたの職場がなくなる」などと応募を促され、断った後も同様の面談が続いた。それでも退職を拒み続けたら、業務センターに異動になった。
仕事はラベル貼りや箱詰め
異動後の研修では人材コンサルタントの講義を受け、会社の構造改革を理解してキャリアの変化を前向きに考えるよう求められた。ここに配属された理由を自ら考えて同僚の前で表明し、作文も書かされたという。
研修後は、5カ月ほど大手物流会社系の倉庫で働き、海外の化粧品などの検品やラベル貼り、箱詰めを担った。その後は東芝系の物流会社の倉庫に移り、他社製の医療機器の部品の箱詰めなどをさせられている。最大10キログラムほどの段ボール箱を積み上げる作業もあるという。
小里さんは、社外の働き口もさがしたが、キャリアを生かせる求人は見つけられなかったという。「20代、30代の転職を受け入れる企業は多いが、50代はほぼゼロ。会社を出れば、路頭に迷うかもしれない」と話した。
原発事業に失敗→７千人削減
会見に同席した代理人の弁護士は「辞めてもらえなかったから追い出し部屋に行かせて、重労働をさせた。一連の行為に違法性があるかがポイントだ」と指摘した。
東芝は米国の原発事業に失敗し、経営難に苦しんだ。半導体メモリー事業を高値で売って倒産の危機をしのぐ一方で、18年秋にグループで7千人を減らす計画を発表。ESSも希望退職を募ったが、応募したのは427人で、想定の約800人に届かなかった。
ESSは18年9月中間決算で営業赤字を出したが、東芝グループ全体では黒字の経営環境で、会社側が一方的な整理解雇に踏み切れば、違法になり得る状況だった。「希望退職」という建前で、
特定の社員を選んで辞めさせようとしたのかどうか。小里さん側は、それも裁判で明らかにしたいと考えている。（内藤尚志）
希望退職募集は36社１万人超
民間調査会社の東京商工リサーチのまとめでは、19年に希望退職を募集した36社の業種をみると、リーマン・ショック後に希望退職募集を繰り返した電機業界をはじめ、製薬、食品など多岐にわたる。
20年に入っても、コンビニ大手のファミリーマートが全社員の1割にあたる800人を募集するなど現時点で2ケタにのぼり、リストラの動きが加速している。
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目立つのは、業績が堅調にもかかわらず実施する「黒字リストラ」だ。国内で進む人口減や、国際的な競争激化をにらんだ「先行型」とも呼ばれる。売上高が伸びない中でも人件費を減らすことで、利益を確保しようという経営戦略だ。
リストラの一方で、中途採用を増やす企業も少なくない。主力事業を転換する「構造改革」を掲げ、人材も「選択と集中」に対応させようとしている。
ほとんどの実施企業が、退職金を積み増したり次の就職先を支援したりして、あくまで「自主的な退職」という形をとる。日本型経営の「終身雇用」から脱却し、転職など「多様な働き方」を実現するという建前だ。
「指名解雇のような例も」
だが、電機業界のリストラに向き合ってきた電機・情報ユニオンの森英一書記長