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「一般選抜はあきらめた」コロナ禍で始まる新大学入試

コロナ禍の終息が見えないなか、改革初年度の大学入試が始まった。先頭を切って15日から出願が始まったのは、AO入試から衣替えした総合型選抜。二転三転した入試改革に振り回されてきた受験生は、コロナ禍という不安も抱えながら受験シーズンに突入した。
「国立大を一般選抜で受けるのは、あきらめた」
関東地方の公立高校3年の女子生徒は、そう話す。この夏、狙いを私大の総合型選抜に切り替えた。昨秋以降、英語民間試験の活用見送りなど、国立大受験の最初の関門となる大学入学共通テストの制度が次々と変わり、今年は長期休校で高校の受験対策が夏休み前までほぼ進まなかった。塾もオンラインの映像授業。「自分ひとりで国立大受験は厳しいと、夏休み前に判断した」
この数週間で、総合型の出願に必要な志望理由書や小論文を仕上げたが、不安はある。コロナ禍で先が見えず、早く合格を得ようと総合型に切り替える生徒も多いと聞いた。高校の先生には「今回は狭き門になる。不合格でもがっかりしないで一般入試に切り替えられるか」と問われ、念のため共通テストの出願書類も高校に提出した。「やれることをやるしかない」
「全国大会出場」が「全国大会レベル」に…
「出願時期が遅れたことで、合否発表も遅くなった。一般選抜に向けた勉強に集中できない」。例年20人前後がAO入試を受けてきた大阪府立高に通う3年の女子生徒（17）が志望する奈良県の国立大は、総合型の試験日が11月中旬、合格発表は例年よりも1カ月ほど遅い11月末。約2カ月間、本を読んだり小論文を書いたりして総合型に備えながら、一般選抜の勉強も続ける。「受かっているかわからないまま勉強する期間が長いのはつらい。ただでさえ入試制度が変わり、不安でいっぱいなのに」ともらす。
同じ高校の別の女子生徒（17）は、高知大を総合型で受験する。10月から始まる選考では、大学の講義への参加や面接が予定されているが、新型コロナウイルスの感染状況次第では内容が変わる可能性があるという。「選考まで1カ月もない。選考の内容が確定していないようなので不安。変わらないことを祈るしかない」
福岡県の私立高校で進路指導を担当する男性教諭は「まだ6月くらいの感覚なのに、もう出願先を決めなければならない。生徒も教員も準備する時間が足りない」と話す。2カ月休校したが総合型の出願の後ろ倒しは、9月1日から15日への2週間。「生徒も気持ちがバタバタしている」
今年は、総合型や学校推薦型のアピール材料になる部活動の大会やコンクールが軒並み中止に。調査書に「全国大会出場」と書けたはずの生徒も、「全国大会レベル」としか書けない。「実力を証明しづらいから、自信を持って手を挙げにくい」という。
それでも、総合型、学校推薦型の両選抜を希望する3年生は例年より多い。「コロナで不安な中、志望校のレベルを下げても早く進路を確定させて、保護者も安心したいのでは」。両選抜の枠を各大学が拡大する傾向にあるため、学校としてどう体系的に指導するかを模索中だ。（宮坂麻子、山田健悟、渡辺純子）
出願要件変更…大学側も手探り
未曽有のコロナ禍に、大学側も手探りだ。
総合型選抜で総定員の約4%の約190人を受け入れる予定の青山学院大（東京都）には、15日午後から出願書類が届き、職員が仕分け作業をした。
コロナ禍を受け、「2年以内」としていた出願時に出す英検やTOEICなど英語民間試験の成績の有効期限を外した。調査書も3年生の1学期分までにこだわらず、高校で記載できる範囲での提出を認める。そのうえで、感染対策を徹底してキャンパスで受験させる。鈴木博貴入試課長は「昨年より出願者は多い。制度変更やコロナの影響もあるかもしれない」とみる。
関西大（大阪府吹田市）は新たに、総合型の受験生に「出願資格に関する説明書」の提出を求める。各学部で定める出願資格には、「スピーチコンテストなどの入賞」「ボランティアやスポーツ・クラブや芸能・芸術など特色ある活動に積極的」といった条件が含まれる。国内外の大会やコンクールなどの多くが中止となり、受賞歴や戦績で出願資格を証明できない受験生も多い。そこで高校の教員や親族以外の第三者などに、実力や努力の過程を「説明」してもらうことにした。
「受験生は時間をかけて計画を立ててきたはず。出願すらできないという事態を防ぐための対応策」と担当者は言う。「説明書」は出願資格の確認に使い、合否は各学部が別に求める書類や面接で決める。
神戸大（神戸市灘区）は、休校で学習に遅れが出た受験生に配慮し、例年は課していた「学業等評価書」の提出をなくした。