【米上院議員】新型コロナ拡大前に株売却　機密利用か

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57058220R20C20A3EAF000/

米上院議員、新型コロナ拡大前に株売却　機密利用か
2020年3月21日 2:26

【ワシントン=中村亮】米国内で新型コロナウイルスの感染拡大が確認される前に米与党・共和党のリチャード・バー上院議員が保有株式を売却していたことが20日までに明らかになった。議会は政府の機密情報のアクセス権を持っており感染拡大の可能性が高いとみて売却を決め、損失を回避した疑いが浮上している。バー氏は疑惑を否定するが、保守系メディアからも倫理観に欠けると批判する声が出ている。

政治資金の流れなどを監視する民間団体「責任ある政治センター」によると、バー夫妻は2月13日に最大170万ドル（約1億9000万円）程度の保有株式を売却した。売却銘柄には新型コロナの感染拡大で大打撃を受けている複数のホテル運営会社が含まれる。13日に株式の新規購入はしていないという。

バー氏は上院情報特別委員長を務め、米メディアによると非公開会合で新型コロナに関して政府から定期的に説明を受けていた。連邦議員は公務で得た非公開情報を私的利益のために利用してはならないと法律で規定されており、バー氏が機密情報を材料に資産の売却を決めていれば違法行為の可能性も出てくる。米国では2月下旬ごろから新型コロナの感染拡大が目立ち始めた。

米メディアによると、共和党のケリー・ロフラー上院議員も損失回避を狙った株売却の疑いがある。夫がニューヨーク証券取引所を傘下に置くインターコンチネンタル取引所（ICE）のジェフリー・スプレッカー最高経営責任者（CEO）であることも疑惑に拍車をかけている。野党・民主党では重鎮ダイアン・ファインスタイン上院議員に同様の疑惑が浮上している。

疑惑に批判の声があがる。保守系のFOXニュースの看板司会者タッカー・カールソン氏はバー氏に対し株式売却について説明を求めたうえで「それができないなら職を辞し、インサイダー取引で起訴されるべきだ」と強調した。「危機下で国を裏切ることを超える倫理上の罪はない」と断じた。

疑惑が事実であれば議会に対する米国民の信頼をさらに失墜させるのは確実だ。米調査会社ギャラップによると、議会の支持率は2月時点で23%にとどまる。40%前後で推移するトランプ大統領の支持率を一貫して大きく下回っている。