- 1 : 2020/08/18(火) 20:00:20.981 ID:nfsUuaDl0
- 後輩「ごちそうさまでした」
先輩「うひょ~!」
後輩「?」
先輩「茶碗に米粒残ってねえじゃん! ご立派だねえ! お前飢饉でも経験してんのかよ!」
後輩「しました」
先輩「……え?」
後輩「まだ子供の頃に……」
先輩「その話、詳しく聞かせろよ」
後輩「ええ、あなたにはぜひ話しておきたい」
- 2 : 2020/08/18(火) 20:05:08.293 ID:nfsUuaDl0
- 後輩「僕はある地方の小さな村で育ちました」
後輩「人口でいえば、せいぜい数十人……交通の便も悪く、外界から隔絶した村でした」
先輩「どうやって生活してたんだ? たとえば食糧とか……」
後輩「たまに大人が買い出しに出てましたが、半ば自給自足の生活でした」
後輩「もちろん大変だったけど、幸せな毎日を送っていたんです」
…………
……
- 3 : 2020/08/18(火) 20:05:46.562 ID:FtMevWJ80
- 完
- 5 : 2020/08/18(火) 20:08:58.721 ID:nfsUuaDl0
- 少年「どうだい、父ちゃん!」
父「稲は順調に育ってるぞ」
父「今年もいい米が取れそうだ!」
母「畑もバッチリよ。いいお野菜がたくさん食べられるわよ」
少年「やったぁ!」
妹「楽しみだね、お兄ちゃん!」
- 6 : 2020/08/18(火) 20:09:55.558 ID:Nrgqqp0J0
- おしまい
- 7 : 2020/08/18(火) 20:11:14.598 ID:nfsUuaDl0
- ビュゴォォォォォ……!
ガタガタガタ…
父「ものすごい台風だ……こんなの初めてだ!」
母「作物は大丈夫かしら……」
少年「父ちゃん、母ちゃん……」
妹「こわいよ……お兄ちゃん」
少年「大丈夫さ、お前はぼくが守る!」ギュッ
- 8 : 2020/08/18(火) 20:11:33.118 ID:HsJOsTWfa
- 米粒残さず食わない奴は飲食バイト未経験者
- 11 : 2020/08/18(火) 20:12:53.861 ID:HsJOsTWfa
- >>8
×食わない
〇食う - 9 : 2020/08/18(火) 20:11:43.900 ID:JJ4UEmmur
- なんだこれ
- 10 : 2020/08/18(火) 20:12:50.847 ID:qE2g68FW0
- 洗うときめんどくさいだろ
こどおじにはわからんか - 12 : 2020/08/18(火) 20:14:24.267 ID:nfsUuaDl0
- グチャッ…
父「ダメだ……田んぼが全部ダメになってる……」
母「畑も全滅だわ……」
父「他の家も……似たようなものみたいだ」
少年(ぼくたちは、自分で育てた食べ物を食べる生活をしてる……)
少年(もし、それが全部ダメになったら……どうなっちゃうんだろう)
- 13 : 2020/08/18(火) 20:17:25.108 ID:nfsUuaDl0
- 父「蓄えてた食糧もなくなってきたし、このままじゃ村人全員飢え死にだ」
父「よその村や町に行ってくる」
ところが――
「悪いが、力にはなれんな」
「こっちもあの台風で大損害なんだ! とても助ける余裕はないよ!」
「すまんねえ……援助してやりたいのは山々だけど……」
父「いえ、すいません……」
- 14 : 2020/08/18(火) 20:21:58.489 ID:nfsUuaDl0
- 先輩「飢饉ってのはそういうことか……」
先輩「だけど、そういう時は自治体を頼ればいいんじゃねえの?」
先輩「状況が状況だし、食糧ぐらいいくらでも援助してくれるだろ」
後輩「もちろん、父は知事のところへも行ったのですが……」
……
知事「ん~? ろくに税も納められてないちっぽけな村が今更なにをいう!」
知事「いっそ全員餓死してくれれば、土地が空いて有効利用できるしねえ!」
知事「というわけで、勝手に全滅したまえ! ファファファ!」
- 15 : 2020/08/18(火) 20:23:10.924 ID:JJ4UEmmur
- ファファファて
- 16 : 2020/08/18(火) 20:24:31.484 ID:mg2T1hhja
- エクスデス知事
- 17 : 2020/08/18(火) 20:24:47.081 ID:nfsUuaDl0
- 母「今日のご飯よ」
妹「えぇ、これだけ……?」
父「すまん……俺が不甲斐ないせいで……」
妹「おとうさんのせいじゃないよ……」
少年「ほら、ぼくの分あげるから」
妹「ううん、大丈夫! あたしこれで足りる!」
少年「いい子、いい子」ナデナデ
- 18 : 2020/08/18(火) 20:25:58.724 ID:WnK/xAIB0
- エッロ
- 19 : 2020/08/18(火) 20:27:08.585 ID:nfsUuaDl0
- 少年(もう何日食べてないんだろう……)
少年(ついに……ぼく以外みんな倒れてしまった……)
少年「誰か……」
少年「誰か助けて……ッ!」
ブロロロロ…
- 20 : 2020/08/18(火) 20:30:46.158 ID:nfsUuaDl0
- キキッ
少年「うわっ、おおきい車……」
青年「ちょいと聞きたいんだけど」
少年「なんでしょう?」
青年「風の便りで聞いたんだが、食糧に困ってる村ってのはここかな?」
少年「そうですけど……」
青年「そりゃよかった。食べ物を持ってきたから、みんなに食べてもらおうと思ってさ」
少年「えっ!」
- 21 : 2020/08/18(火) 20:33:23.662 ID:nfsUuaDl0
- 父「おお……こんなに食べ物が……」ゲッソリ
母「あなたは神様だわ……」ゲッソリ
妹「やったぁ……」ゲッソリ
少年「じゃあさっそく――」
青年「ちょっと待った!」
少年「え?」
青年「俺もここまでの飢餓は想定してなかった」
青年「このまま食事したら、“リフィーディング症候群”を起こす危険性がある!」
- 22 : 2020/08/18(火) 20:33:55.930 ID:mg2T1hhja
- 医学知識のスレだったのか
- 23 : 2020/08/18(火) 20:36:20.005 ID:nfsUuaDl0
- 少年「リフィーディング症候群?」
青年「簡単にいうと、飢えた状態で急激に栄養補給してしまうと、体に異常が起こり最悪死んでしまうって現象だ」
少年「ええっ!?」
青年「昔、兵糧攻めにあい、飢えた兵士がお粥を沢山食べたら、次々に死んでしまったという実例もある」
少年「じゃあ、どうすれば……」
青年「たくさん食べたいだろうが、しばらくはほんのちょっとずつ、ゆっくりと栄養を取るんだ」
青年「そうすれば、死に至ることはない」
少年「分かりました……あなたにお任せします!」
- 24 : 2020/08/18(火) 20:37:08.980 ID:vNAZz4wbr
- そんなんあるのか
- 25 : 2020/08/18(火) 20:40:07.133 ID:nfsUuaDl0
- ……
青年「そろそろいいだろう。さ、たくさん食べてくれ!」
少年「いただきます!」
妹「いただきます!」
モグモグ… パクパク… ムシャムシャ…
少年「おいしい……!」
妹「おいしー!」
父「本当にありがとう……」
母「他の村人も、みんな助かりました……」
青年「いやいや、なんのこれしき」
- 26 : 2020/08/18(火) 20:41:06.006 ID:ogj+2HsDa
- 糖を分解するためのビタミンを身体が蓄えてないので栄養を得る前に欠乏症で死ぬらしい
- 27 : 2020/08/18(火) 20:43:32.062 ID:nfsUuaDl0
- 少年「……ふぅ」
青年「ハハハ、さすがにもう食えないか」
少年「食べきれなくて……ごめんなさい」
青年「いいんだいいんだ」
青年「食いきれないほどメシがあるってのは幸せなことなんだ」
- 28 : 2020/08/18(火) 20:44:40.090 ID:QccdI3YZ0
- 飢饉アットマーク
- 29 : 2020/08/18(火) 20:45:59.862 ID:GDAUsM8y0
- おがくずとか泥で作ったパンを食べるシーンはないのか
- 30 : 2020/08/18(火) 20:46:00.664 ID:nfsUuaDl0
- ……
青年「さて、と。そろそろ俺は村を出るか」
少年「お兄さん、本当にありがとう!」
青年「なあに気にするな。困った時はお互い様さ」
青年「じゃあな!」
ブロロロロロロ…
少年(なんてかっこいい背中なんだ……)
- 31 : 2020/08/18(火) 20:49:09.983 ID:nfsUuaDl0
- ……
…………
先輩「……」
先輩「お前は……お前は……まさか……」
先輩「あの時の……少年!?」
後輩「思い出されましたか」
後輩「そう、そう青年こそ……あなたなんです」
- 32 : 2020/08/18(火) 20:49:28.874 ID:p9Jg5NzQ0
- まともに読んでる人0人説
- 33 : 2020/08/18(火) 20:50:35.658 ID:bBaOGGam0
- >>32
少なくとも俺はちゃんと読み飛ばしてるぞ - 35 : 2020/08/18(火) 20:52:47.415 ID:iYML2p5dM
- >>32
楽しく読ませていただいてます - 34 : 2020/08/18(火) 20:51:33.641 ID:6d6oLTc0a
- この後めちゃくちゃのやつじゃん
- 36 : 2020/08/18(火) 20:53:13.250 ID:nfsUuaDl0
- 後輩「僕は大きくなって、村を出て、真っ先にあなたを捜しました」
後輩「やがて、現在あなたはある会社に勤めてると分かり――」
先輩「俺を追って、この会社に入ったってわけか」
後輩「ええ、そうです」
先輩「立派なもんだ。そう簡単に入れる会社でもねえのによ」
先輩「だが……俺はお前にそこまで慕われるほど立派な人間じゃないぜ」
後輩「え?」
- 37 : 2020/08/18(火) 20:57:35.541 ID:nfsUuaDl0
- 先輩「あん時、俺は調子に乗ってた」
先輩「羽振りがよくて、金も食い物もあり余ってて、自分が偉くなったつもりになってた」
先輩「それでふと、神様気取りで恵まれない人に愛の手を、なんてのをやってみたくなったんだ」
先輩「俺は心の底から村を救いたかったわけじゃねえ……道楽みたいなもんだったんだ」
先輩「現に、今の今まですっかり忘れてたくらいだしな」
後輩「いいじゃないですか、道楽」
先輩「!」
後輩「あの時先輩が何を考えていようと……僕らの村は救われた。それが全てです」
後輩「本当にありがとうございました、先輩!」
先輩「よせよ、恥ずかしい……」
先輩(それにしてもあの子供が……本当に立派になったもんだ)
コメント